バンガードの米国増配株式ETFのVIGについて、構成銘柄や分配金、類似商品のDGROやDGRW等との比較を交えて、解説していきます。
基本情報
商品名 | Vanguard Dividend Appreciation ETF |
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ティッカー | VIG |
市場 | NYSE Arca |
運用会社 | The Vanguard Group, Inc. |
設定日 | 2006年4月21日 |
経費率 | 0.05% |
ベンチマーク | S&P U.S. Dividend Growers Index |
銘柄数 | 337 |
最大銘柄比率 | 5.11%(ブロードコム) |
上位10銘柄比率 | 32.2% |
純資産総額 | 893億ドル |
分配金 | 四半期毎 |
VIGは、バンガードが提供するETF(上場投資信託)です。
ベンチマーク
VIGのベンチマークは、S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスの提供するS&P U.S. Dividend Growers Index(米国配当成長株指数)です。この指数は、連続増配を10年以上継続している米国企業を対象としています。また、REIT銘柄及び高利回り上位25%の企業は除外されています。時価総額加重平均の指数ですが、1銘柄当たりが占める割合は上限4%とされています。
構成銘柄組み替えは毎年3月に実施され、6月、9月、12月にリバランスが行われます。構成銘柄が変更されるのは3月のみで、上限の調整が入るのも3月のみとされているため、指数の内容に大きな変更が入るのは年に一度となります。
2025年3月末の構成銘柄組み換えの内容については、以下の記事で纏めています。

パフォーマンス

上図は、2006年4月のVIG設定から2025年6月までの、TradingView提供のチャートです。19年程で約4倍になっています。CAGR(年平均成長率)は7.6%程度となります。
CY | VIG | S&P 500 |
---|---|---|
2024 | +17.02% | +25.02% |
2023 | +14.46% | +26.29% |
2022 | -9.79% | -18.11% |
2021 | +23.64% | +28.71% |
2020 | +15.46% | +18.40% |
2019 | +29.71% | +31.49% |
2018 | -2.02% | -4.38% |
2017 | +22.22% | +21.83% |
2016 | +11.84% | +11.96% |
2015 | -1.95% | +1.38% |
過去10年のパフォーマンスをS&P 500と比較すると、10年中3年しかVIGは上回っていません。2022年や2018年のように市場全体が下落した際にVIGの方が良い結果となっています。

上図は、VOO(Vanguard S&P 500 ETF)とVIGを配当込みのパフォーマンスで比較した、TradingView提供のチャートです。VOOよりトータルリターンは劣るものの下落幅は小さい傾向があるため、ポートフォリオのボラティリティを低く抑えたい方には良いかもしれません。
構成銘柄
No. | 銘柄名 | ティッカー | 比率 |
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1 | ブロードコム | AVGO | 5.11% |
2 | マイクロソフト | MSFT | 4.65% |
3 | JPモルガン・チェース | JPM | 3.78% |
4 | アップル | AAPL | 3.45% |
5 | ビザ | V | 3.05% |
6 | イーライ・リリー | LLY | 2.95% |
7 | マスターカード | MA | 2.44% |
8 | コストコ・ホールセール | COST | 2.34% |
9 | エクソン・モービル | XOM | 2.28% |
10 | ウォルマート | WMT | 2.18% |
11 | プロクター・アンド・ギャンブル | PG | 2.03% |
12 | ジョンソン・エンド・ジョンソン | JNJ | 1.90% |
13 | ホーム・デポ | HD | 1.86% |
14 | アッヴィ | ABBV | 1.67% |
15 | バンク・オブ・アメリカ | BAC | 1.50% |
16 | コカ・コーラ | KO | 1.42% |
17 | ユナイテッドヘルス・グループ | UNH | 1.41% |
18 | オラクル | ORCL | 1.35% |
19 | シスコシステムズ | CSCO | 1.28% |
20 | IBM | IBM | 1.22% |
上位20社は上記の通りで、上位10社までで全体の32.2%の割合を占めます。連続増配10年以上で限定されているため、エヌビディア、アマゾン、アルファベット等の成長銘柄が含まれていませんが、その分安定した大企業が上位を占めています。近年アップルが追加されたように、最近配当を開始したメタ・プラットフォームやアルファベットも10年後には追加されているかもしれません。
セクター比率

REITが除外されているので不動産セクターはありませんが、幅広くセクターは分散されています。S&P 500指数と比較すると、金融、ヘルスケア、生活必需品あたりの比率が増え、情報技術、一般消費財、コミュニケーション・サービスあたりが減っています。
情報技術セクターは無配当のグロース銘柄が多く、一般消費財セクターはアマゾンやテスラ、コミュニケーション・サービスセクターはアルファベットやメタ・プラットフォームが連続増配10年を満たさないことがセクター比率に表れています。
ヘルスケアや生活必需品のようなディフェンシブセクターは、配当貴族(連続増配25年以上)や50年以上の増配を続ける安定成熟企業が多く含まれています。この辺りが下落時の強さに反映されていそうです。
分配金
分配金は四半期毎の支払いで、直近の分配金利回りは1.8%程度となっています。

年単位で直近10年分の分配金を見てみると、連続増配株式ETFだけあって全ての年で増配となっています。パンデミックで不況となった2020年はVOOについては減配となっていましたので、安定性という意味では流石の結果となっています。上記期間でのCAGRは7.1%で、同時期のVOOの分配金CAGRは6.1%でしたので、増配率も少しVOOを上回っています。
直近の権利確定日と支払い日は以下のようになっています。
権利確定日 | 支払日 | 分配金 |
---|---|---|
2025年3月27日 | 2025年3月31日 | 0.9377ドル |
2024年12月23日 | 2024年12月26日 | 0.8756ドル |
2024年9月27日 | 2024年10月1日 | 0.8351ドル |
2024年6月28日 | 2024年7月2日 | 0.8992ドル |
ETF比較
配当成長株ETF(DGRO, DGRW)
類似商品として、DGRO及びDGRWとの比較を見てみます。
VIG | DGRO | DGRW | |
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商品名 | Vanguard Dividend Appreciation ETF | iShares Core Dividend Growth ETF | WisdomTree U.S. Quality Dividend Growth Fund |
運用会社 | バンガード | ブラックロック | ウィズダムツリー |
設定日 | 2006年4月21日 | 2014年6月10日 | 2013年5月22日 |
経費率 | 0.05% | 0.08% | 0.28% |
ベンチマーク | S&P U.S. Dividend Growers Index | Morningstar US Dividend Growth Index | WisdomTree U.S. Quality Dividend Growth Index |
銘柄数 | 337 | 407 | 303 |
最大構成比率 | 5.11%(ブロードコム) | 3.66%(マイクロソフト) | 9.06%(マイクロソフト) |
上位10銘柄比率 | 32.2% | 26.8% | 37.5% |
純資産総額 | 893億ドル | 318億ドル | 153億ドル |
分配金 | 四半期毎 | 四半期毎 | 毎月 |
30日SEC利回り | 1.69% | 2.28% | 1.54% |
市場価格 | 201.16ドル | 62.24ドル | 81.67ドル |
それぞれベンチマークに違いがあり、VIGは連続増配10年以上でREIT銘柄等を除外した上限のある時価総額加重平均、DGROは連続増配5年以上でREIT銘柄等を除外した配当加重平均、DGRWは連続増配の条件はなくREIT銘柄も含む配当加重平均となっています。
VIGとDGROのセクター比率はある程度似ていますが、DGROの方が情報技術の割合が低めとなっています。DGRWはVIGとDGROより金融の割合が低く、コミュニケーション・サービスの割合が高くなっています。連続増配の条件がないため、配当を開始したばかりのアルファベットとメタ・プラットフォームもDGRWには含まれています。
DGROは他と比べると少し分配金利回りが高めとなっています。DGRWは分配金が毎月となっているので、毎月入金が欲しい方に適していますが、他と比べて経費率が高く設定されています。

上図は、一番新しいDGROの設定月から直近までのTradingView提供のチャートです。配当込みのリターンで、DGROとVIGはほぼ変わらず、DGRWが30%程度上回っています。同期間のVOOは、DGRWをさらに20%程度上回っています。
3銘柄を比較すると、安定と経費率重視ならVIG、分配金利回りを高めにしたいならDGRO、毎月分配金に魅力を感じるならDGRWといったところでしょうか。
配当成長ではなく高配当よりの商品としては、バンガードのVYM、ブラックロックのHDV、ステート・ストリートのSPYD、チャールズ・シュワブのSCHD等が挙げられます。安定より分配金利回りをより重視する場合は、これらの商品が候補となると思います。
VIGは、S&P 500指数に連動したETFであるVOOより下落耐性と分配金の安定性は高いと言えますが、長期的にはトータルリターンで少し劣る傾向があります。個人的に好きなETFではありますが、暴落時のショックを少しでも和らげたいという方以外はVOOの方が無難かと思います。連続増配の銘柄のスクリーニングに使うくらいが良いかもしれません。
※本記事は投資勧誘を目的とするものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします