7/29の決算発表を受けて、ユナイテッドヘルス・グループ<UNH>の株価は7.46%下落しました。前回の2025Q1の決算発表時は22%もの下落と大幅下落続きとなっています。今回の2025Q2決算内容について見ていきます。
2025Q2決算内容
▫️売上
1,116億ドル(予想1,116億ドル)
前年同期比:+12.9%
▫️調整後EPS
4.08ドル(予想4.45ドル)
前年同期比:-40.0%
▫️ガイダンス
16ドル以上(予想20.40ドル)
前々期:29.5~30ドル
前期(撤回前):26~26.5ドル
売上は予想と一致し、2桁成長となっているので、悲観的な内容ではありません。
調整後EPSは、予想を大きく下回り、前年同期比では-40%と今まで見たことのない数値となっています。
調整後EPSのガイダンスは、16ドル以上(At least $16.00)とされ、予想の20.4ドルを大きく下回りました。2024年の実績が27.7ドルなので、下限としている16ドルと仮定すると、2025年の調整後EPSは前年比-42%となります。株価は年初来で48%程下落していますので、現在の株価水準は妥当なのかもしれません。

株主還元は継続
先月、配当は$2.10から$2.21に引き上げる5.2%の増配を実施しています。ガイダンス程度のEPSで着地した場合、配当性向は50%程度になります。昨年までの配当性向は安定して30%弱でしたので、今までの水準よりは上昇するものの、連続増配を継続することは問題なくできそうです。
自社株買いも継続されていて、2024年のQ2までの実績と比較すると、2025年の方が自社株買いの額は増えています。株価低迷した時期に大きな自社株買いを実施することで、効率的に発行済株式数の減少によるEPS上昇に繋げることができます。
セグメント別
ユナイテッドヘルスケア
▫️売上
861億ドル
前年同期比:+16.6%
▫️ガイダンス
売上:3,440~3,455億ドル
営業利益率:2.6~2.7%
売上は前年同期比で16.6%も増えていて、ここだけを見れば好調です。
ただ、営業利益は前年同期の40億ドルから今期は21億ドルと半減していて、営業利益率が大幅に減少しています。営業利益率の低下要因は、予想を上回る医療費の増加とメディケア資金の削減とされています。
ガイダンスの売上は、下限で計算しても前年比で15%以上の上昇が見込まれていて、これは過去10年で最大の伸びとなっています。営業利益率は、2024年は5.4%でしたので、半減となります。売上成長は問題ないので、利益を戻せるかが焦点になりますが、まだ改善を見通せてはいない状況のようです。この辺りはユナイテッドヘルスに限らず、医療保険業界全体での問題となります。
オプタム
▫️売上
672億ドル
前年同期比:+6.9%
▫️ガイダンス
売上:2,660~2,675億ドル
営業利益率:4.7~4.8%
売上は前年同期比で6.9%の増加となり、今までのオプタムの成長率と比べると物足りない結果となっています。オプタム内のセグメント別で見ると、オプタム・ヘルスの売上が252億ドルで前年同期比で7%の減少となっていて、ここが足を引っ張っています。この減少は、既存顧客契約の見直しとメディケア資金の削減関連の影響とされています。
営業利益については、前年同期の39億ドルから31億ドルに減少しています。こちらもオプタム・ヘルスの影響で、メディケア資金削減と新規患者層の構成変化が要因とされています。
ガイダンスの売上は、下限で計算すると前年比で5%程度の上昇となり、これは過去10年で最低となっています。2019年以降ずっとユナイテッドヘルスよりオプタムの成長率の方が高く、オプタムが成長を牽引してきていました。営業利益率も2024年は7.2%だったのが、2025年は4.7~4.8%の見込みと大きく減少しています。オプタム事業のガイダンスは、売上、利益共に厳しいものとなっています。
今後の見通し
5月のCEO交代により再登板したスティーブン・ヘムズリーCEOは、2026年には利益成長に戻るとコメントしています。アンドリュー・ウッティ前CEOは、13~16%の利益成長へ戻す、とQ1決算時にコメントしていたため、今回は具体的な数値もなく、少しトーンダウンしたように感じます。
ユナイテッドヘルス事業の利益率大幅低下と成長事業だったオプタム事業の減速が重なり、株価の大幅下落に繋がっていると考えられます。両者の要因とされている、医療費の増加とメディケア資金削減は、個社だけでなく業界全体の構造的な問題でもあり、すぐに改善されるものではないと思われます。今までのような安定高成長の優良企業に戻れるかはまだ何とも言えない状況かと思います。
株主還元は継続され、むしろ去年より強化されているため、2026年に再び高い利益成長に戻るのであれば、大きな上昇が見込める可能性はあります。悪材料で尽くしで今が底であれば良いですが、政府の政策や訴訟、消費者の行動変化、世間からの批判等も含め、楽観視できる状況でもなく、先行きはまだまだ不透明で厳しいと見ておいた方が良さそうです。

※本記事は投資勧誘を目的とするものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします